偽りの御曹司とマイペースな恋を


やっと海外から帰ってきた彼氏。
これからやっと2人で暮らしていける。

「おはよう。朝飯できてる」
「…私だってちょっとくらいは家事とか出来るよ」

いい気分で目がさめて、リビングに向かうと既に着替えを済ませ
ベランダで洗濯物を干す瓜生の後ろ姿。
台所からは炊きあがるご飯とお味噌汁のいい匂い。今日は和食らしい。

1人で全部やってしまうのは性分なのかもしれないけど。
やっぱり同棲するのなら役割分担でいきたいと思う歩。

家賃だって光熱費だって彼の方が多く払っている。
用意してくれたのは向こうだし稼ぎだって段違いに違うから仕方ないのだが、
だからこそ家の事くらいはと。あとこれでも女の子だからちょっとくらいは。

「勝手に体が動くんだ。何時もしてたから。嫌、か?」
「だってこれじゃイツロ君と暮らしてるって言うより飼われてるみたい」
「馬鹿」

歩の言葉に瓜生は作業を止めてリビングに入ってくる。
その表情は怒っているようには見えないけれど。
怖い顔。

「……だって」
「俺は何時も通りにしてるだけだ。お前も何時も通りにしてくれ。
一緒に住む事でお前に制限したり我慢させたりするのは嫌なんだ。
もちろん俺も何も苦じゃない。…お前が、嫌って言うのなら考える」
「嫌じゃないよ。イツロ君と朝からずぅううっと一緒って幸せだよ」
「俺も」
「じゃあ夕飯は私が作る。作って待ってる」
「分かった。それじゃ、頼むな」
「うん」

瓜生は少し笑って歩の頭を撫でる。歩も微笑み返した。

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