一途な外科医と溺愛懐妊~甘い夜に愛の証を刻まれました~

「ほんとにごめん!」

「いいんですって」

「いいやよくないよ。せっかくのピクニック、台無しにしちゃった」

 平謝りする游さんに、私はひたすら首を横に振った。

「そんなことありません。楽しかったです」

嘘じゃない。今日は最高の日だった。

だって、会社のことも、隆のことも、いちども思い出さなかったんだから。

おそらくそれは游さんが傍にいてくれたおかげだろう。

どんなにお金を掛けたデートよりも、価値があったと思う。そしてそんな気持ちにさせてくれる游さんの存在に心惹かれているのを感じた。

「……本当?」

「本当です。だからまた来ましょうね。今度は私もボート漕ぎますから!」

「うん、分かった。……じゃあ、帰ろうか」

 夕焼け空を追いかけながら歩く。程よい疲労感が私を包んでいる。電車だけは寝過ごさないようにしよう。そう思いながら私は家路についた。
 
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