CURRENT



そう言われてよく見ると、なるほど。

確かに笑っていない。



「元々、イケメンなんて裏表があるもんですよ」



なんて、決めつけたことを言ってくれる。

でも、ここまで表情が出ているのに気づかない彼女たちって、一体なんだろう。

それだけ、イケメンに夢中ということか。

つい、じっと見ていたら、ふと彼がこっちを見た。

ばっちり目が合ってしまったあと、にっこりと笑顔を見せられた。

私は、すぐに目を逸らす。

目一つで見抜く菜月に見られたら、色々と勘ぐられる。

イヤ、菜月はいいとしても彼女たちになんてバレたら……。

何をされるか分かったものじゃない。

極力、彼と話したくはない。

みんなの前で何かするということはないだろうけど、油断は出来ない。

ここに来た目的も分かっていない今、近寄らないことが正解だ。


そんなことを思っている私の隣では、菜月が私をじっと見ていることに気づかなかった。




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