同期がオトコに変わるとき
豹変?

週明け、いつも通りの時間に出勤すると、営業車にポスターを積み込んでいる真辺に出くわした。

顔を見るのはひと月前の飲み以来だ。


「おはよう、真辺。早いね、もう営業に出るの?」

「ああ、今週中には済ませたいからな」

「そうだよね、ポスターたくさんあるもんね。じゃ、気を付けてね。いってらっしゃい」


積み込み終わった真辺ににっこり笑顔を向け、社屋に入るべくエントランスに向かおうとすると、ガシッと手首を掴まれた。


「藤崎、ちょっとこっちに来い」

「は??」


いきなり手首を掴まれて驚く間もなくぐいぐいと引っ張られ、どんどんエントランスから離されていく。

私、まだタイムカードを押してないんですけど・・・。


社屋と塀の間の庭というには狭い部分に連れ込まれ、塀に背中を押し付けられた。

真辺を見上げると、眉と眉の間にしわを寄せていて、ちょっと怖い。


もしかして怒っているのだろうか?

私、何かしたっけ??

ここ最近の自分の行動を思い出しても、真辺の逆鱗に触れるようなことは何もしていないはず。


「な、何?どうしたの、急に。こんなところに連れてきて、なんか怖いよ・・・?」


長い付き合いだけれどこんな真辺を見るのは初めてで、恐る恐る訊ねると、彼はトンと塀に手をついてぐっと顔を近づけてきた。


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