こちら、私の彼氏です
あぁ、もう。急なことに頭がこんがらかって、自分でもなにを言っているのかよくわからないよ。

なに、この流れ? 私、本当に伊山と付き合えるの? でも、心の準備が……。



そんなことを考えていると、伊山がゆっくりと口を開いた。


「……でも、まあ確かに、もう少し時間があった方が、それはそれでいいのかもな」

「え?」

「お前のこと、正直この場で付き合い始めたいなって思ってるけど、だからこそ、もう少しいっしょにいる時間とか増やして、『好き』って気持ちがもっと大きくなってから恋人同士になった方がいいのかも」


……あ、結局またフラれた。



でも、この前フラれた時みたいなショックはなかった。


むしろ、伊山が私のことをそこまでしっかり考えてくれていることにうれしさを感じた。



「……うん、じゃあ返事待ってる」

「おう」

「……今度、またふたりでご飯行こう。映画とかも行きたい」

「俺スノボも行きたい。お前スノボできる?」

「すごい得意。たぶん伊山より上手いから、いっしょに行ったら伊山にみじめな思いさせちゃうかも」

「じゃあ映画な」

「否定しなよそこは」

「いや、お前ほんとに上手そうだし」


そんな会話をしながら、私たちはいっしょに駅までの道を再び歩きだした。



駅までの道を歩く途中、伊山がさりげなくつないでくれた手と手の感触が、とても恥ずかしく、それ以上にとてもうれしく感じたーー……。
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