E・N・M・A~えんま~


そうーー。


我も思いを遙か昔へと馳せる。


懐かしくもなんともない地獄にふさわしい過去へとーー。



ある日突然、仲の良かったたった一人の兄弟であり友人でもあった弟と引き離された日。


我は血ヘドを吐くまで弟の名を叫んだのだった。



「シュウーーーーーっ!!!!」




…………悲しい記憶に目を閉じる。


「閻魔…」


千夏の温かい体温が我を遠い記憶から我に帰してくれた。


腕に絡まる千夏の細く温かい掌に、心の通うぬくもりに溺れてしまいたい。



このまま出来ることなら何も知らずに我が花嫁に迎えることができたなら、どれほど幸せだろう。


「そう、僕たちの母親は竜神の妻ーーかつては千夏…君と同じ竜神の巫女だった人なんだよ。

そして、その竜神の妻をさらっていって我がものとして略奪した不届きものが、僕らの父ーー先の閻魔大王だったんだ」


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