最果てでもお約束。
焼き増し。
「ふひへへへへブタめ!」
ずーるずーる。
「不適切発言だ・・・」
ずーるずーる。
二人して横になってぎりぎりの細い道を通る。いや、道ではなく塀の上ですが。
「いいんだよ・・・ここ通れない代わりに良いもん食ってんだろ」
「まぁそうだけどさ・・」
ずーるずーる。
くっそー、買ったばかりのシャツが汚れる。
どうもこの塀の上はどこかまで続いているようで、行き止まりの心配は無さそうだった。ついつい緊張も緩む。
「うあー、それにしてもあれだな、殺す気で追っ駆けてきやがる」
「ん・・・まぁあんな事があったばかりだからな」
高校を卒業する少し前、今まで四国だった所が4国と名を変えて独立した。
それから程なくして、我が町に完全武装の戦闘機が降って来た。
誇らしい我が町の住人は、日本政府による賠償も謝罪も受け取らず4国に対する態度を自由にしろと要求。速攻で受理。いやーめでたしめでたし。
「それで不審者狩りと・・・」
んむ、なんか説明くさくて嫌になるが、この町は今や地元民以外の人間にとっては正にキリングフィールド。この間も3人程関係の無い人が斬られたとか殴られただとか。
「それがまさかねぇ・・・」
「・・・・・」
もう引っ越して来てからかれこれ10余年。まさか自分達が不審者呼ばわりされるとは。
「す・・すまん」
自分達、では無い。正確に言えばゆうが、だ。
ゆうは元からの人見知りもあり、殆ど友達がいない。学校は小中高と一緒だったが、もう影の薄い人間のお手本のような人間だった。
卒業してからどうしたかっつーと、なんと浪人ですよ。いや、落第したんじゃなくてもっと勉強してスッゴイ学校に入るつもりだとかなんとか。
いやはや、コンビニでなんとなくバイトしている自分には眩しくてもう見えませんな。
「じゃあ放っておけばよかったのに・・」
「怒るぜー?」
うつむこうにもここは狭く、目を伏せるしか無いゆうはばつの悪そうな顔をして黙った。
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