ドラマチックSボーイ




「女優さんになって。」





女優ではないけれど、彼はあの時の約束を果たして、今ここにいる。



どうして……?

滝沢静こと、蓮見静がデビューしたのは10歳。
そのころの私は、
当時クラスメイトで女優をやっていた
まのかちゃんの衝撃的な一言で、女優の夢を諦めた。


彼もきっと、そう簡単にはなれないなどの厳しい現実や、
子ども同士の下らない約束だから、どうでもいいと思って無いことにしていたのかもしれないのに。



溶けていたはずの疑問符が蘇る。

ただ一つわかるのは、テレビ嫌いの私がなぜ静クンだけ
見ていられたのか ということだけ。


…あの笑顔が、大好きなシズカちゃんの笑顔とにていたから。
懐かしかったんだ。




「あの…2人きりで、話させてくれませんか。」




あなたに聞きたいことがたくさんあるの。


「いいよ。母さん、少し家借りていい?
これは元々俺のおごりだし、ゆっくりしてって。」

「わかったわ。パパラッチに気をつけてね☆」

「アメリカじゃないんだから。」



あ……そうだ。彼は超人気俳優。

スキャンダルとかで外出は控えてるんだ…。

なに言ってんだよ私。



「あの、ごめんなさい。私…」

「いいんだよ。俺もたくさん舞と話したかったし。」



ドキン…


「じゃあ、ちょっと娘さんお借りします。」





そう彼は言って、私たちは店を出た。













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