Blue Moon
バッ、と勢いよく身を翻して廊下へ出る。
何もない廊下に響く足音と、そんな私を嘲笑うかのように照らす月明かり。
音に近づいているのかいないのか、私にはわからない。
それでも走りを緩めることなく走っていたところに突然、黒い物体が私めがけて飛び込んできた。
「…え!?」
その衝撃で、後方へ体が傾き、思い切りしりもちをついてしまった。
「…いたた……、って、猫…?」
膝の上にはもぞもぞ動く物体―――――黒猫が呑気に欠伸をしていた。
「――――へえ…、まさか、本物の人間が住んでいたなんて…」
そこへ降り注ぐ、聞いたことのない声。
ふいに窓の方へ向くと、月明かりに照らされた男の人が私を訝しそうに見下ろし立っていた。