osean's love~改訂版~
目高~medaka~

「す、すみません、遅れました~。ちょっと熊岸先生の手伝いをしていました。……帰りましょう?」

「吉川千夏、15分遅刻。本当に熊岸の手伝いだったのか?」

「はい。今から確認取りに行ったらどうですか?でも、行くときは家の鍵だけ私にくださいね。」

「いいよ、面倒くさい。さあ、帰るぞ……っていうか最近千夏、俺に冷たくない?お仕置きもっとつらいのにするよ?」

「そんなことないです。そしてそんなに顔を近づけないでください。息がかかりそうでキモイです、先生。」

 まじキモイ。血はつながってないけど一応お兄ちゃんの人の顔がこんなにも近くに!!

「ねえ、二人の時は名前で呼び合うって約束じゃん。先生って誰だよ。」

 鰯の顔がさらに近づいてきてぶつかりそうだ。

 いじわる。

「きもいです、鰯。」

「はは、うん、よくできました。」

 鰯は私の耳元でそうつぶやくと、顔を離していった。

「なあ、千夏。どうして遅刻したんだ?」

「だから、熊岸先生の手伝いですってば!」

「……ふ~ん。……じゃあ、これは何?」

  鰯は、私に最新型のスマホを差し出してきた。

 私とお揃いで買ったスマホカバー、まだ使ってたんだ……。

 ちなみに私のカバーは先月破けたので、現在は100均の透明なスマホカバーを使っている。

「そんなに私とお揃いがいいなら、遅刻したお詫びに新しいの買ってあげようか?」

「え?ごめん、何言ってるの?」

「ん?鰯は新しいスマホカバーがほしいけど、私とのお揃いやめたくないんでしょ?」

「いや、別に……。ほかの男が好きな女とのお揃いなんて持たなくていいよ。これももうすぐ買い替える。」

「じゃあ何を見るのよ!」

 人が気遣ってあげたのに失礼な奴だ。

 っていうか、私好きな人なんていないんだけど。

 鰯はスマホの画面を指さした。

 そこに写っていたのは、私が熊岸先生に抱きしめられているところ。

 さらに中央には再生ボタンがついていた。

 きになったので、タッチしてみる。

「好きだよ、千夏」

「……ここ、がっこうですよ?」

「っ!あ、ごめん。」

「……いいえ。」

 そして頬を赤らめてまんざらでもなさそうな顔をする私。

 動画はそこで止まった。

「なあ、こんなことしてたから遅れたんだろう?」

「……うん。なによ、なんか悪い?」

「悪い。俺が近づいたら起こるくせに、熊岸のときは抵抗しないんだもん。」

 鰯はぷ~っとほおをふくらませて、私をにらんでくる。

 鰯に嫌われるのは……困るよ。

 私は鰯の袖口をそっと引いて振り向かせる。

「う……ごめんね?」

「今日一緒の布団で寝てくれるなら許す。」

「え、めんどうくさい、むり。」

「じゃあ許さない。」

「え、ごめん!寝ます!」

「うん、わかった。」

 そういってやっと笑う鰯。

 やっぱりこの笑顔好きだな。

 でも、ひとつわかったことがある。

 こいつ、嫉妬すると面倒くさい。

 

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