俺は絶対好きにならない
七夕祭り 後編
彩羽と俺は、日向病院の屋上にいた

日向病院は一樹の入院していた病院で、一樹と最後に過ごした場所だった

「今日は天の川が凄く綺麗だね」
寝そべっている彩羽がいう

「うん」
「織姫が、彦星に会えるなら、私はかずくんに会えるかな、、、 」
「うん」
「ずるいよね
織姫は、1年に一回会える機会があるのに、私はもう会えないなんて」
「うん」

この織姫の話はいつからか毎年、彩羽がこの日にこの場所でぼやく

かずを口に出して懐かしむのは、この日だけと2人で決めた
かずを思い出して泣いていいのもこの日と決めた
それは、お互いが泣きすぎて、思い出しすぎて、1年間、何もできなかったからだ

「かずくん、もう生まれ変わりしたかなー」
「うん」
「私たちのこと忘れちゃったかな」
「忘れてないよ」
「うん、かずくんだもんね」
「ここにいると、あの日、思い出すな
3人で最後に見た花火」
「うん」
「あの日も晴れてたな」
「かずくんと一緒見た最後の花火から、7月7日の七夕祭りはいつも雨だったね」
「てるてる坊主かざったのにな」
「神様は不平等が好きだからね」
「彦星もなんで今日雨なんだよって突っ込んでるんじゃないのか」
「かなー」
「今日も、天気予報じゃ雨だって言ってたのにな
奇跡的晴れた」
「奇跡的に晴れたなら、織姫たちも奇跡的に会えたということで、私にも奇跡起きないかなー」
「あっ流れ星」

彩羽が夜空に指を差す
「そういえば、かずくん、必死に願ってたね」
「流れ星見えないかなーとかいって」
「何願ってたのかな?」
「びょう、いや、かずだからお菓子食べれますようにとか?」
「かずくん、甘いものすきなのに食事制限で食べられなかったもんね」
「だから、棺にお菓子入れてやったろ」
「すぐ食べちゃうよ
あれぐらい」
「よゆーとか言って」
「いってそう」

「最後、間に合わなくて怒ってるかな、、、 」

俺は何も答えられない

ずっと2人で考えている

あの日、2人で温かい飲み物会に行って戻ったころには、かずはいなかった

どーん
突然、明るくなる

2人とも起き上がって、花火を見る

「わぁ」
「わぁ」

明るくなったおかげで彩羽の顔がわかる

大粒の涙
「3人で見たときと花火は何も変わらない」
「うん」
「かずくんは本当にひどいね
せっかく、織姫と彦星がやっと会える日に勝手にバイバイするなんて」

花火がかわるがわる夜空で花を咲かせる

「会いたいよ、会いたいよ、会いたいよ、会いたいよ
かずくんに、、、 会いたいよ」
彩羽が俺に抱きつく

「皆が私の前からいなくなっちゃう」
「うん」
「お父さんもお母さんもかずくんも
けーちゃんもいつかいなくなっちゃうの?
けーちゃんがいなくなったら私、もう一人ぼっちだよ」
「いなくならないよ」

彩羽の家がいつ行っても、暗いのも底冷えするのもひんやりするのも、理由はここにある

「俺は彩羽と親友なんだからずっといるよ」

そう、親友なんだ

「そばにいるよ」

彩羽がぎゅーっと俺を抱きしめる
肩に顔をうずめる

彩羽が笑ってくれるなら、安心してくれるなら、俺は絶対好きにならない

気づけば、花火が終盤にさしかかる
そのころには、彩羽もいつもの調子に戻っていた
一樹期間は今年も終わろうとしていた

そこで、急に屋上の扉があく
看護師さんかなとふと思って気にしなかった

だが、凄い息切れで、こちらにやってくる

振り向くと、ルイだった

「いた!!」
ルイが息切れしながら、サトに祭りで会ってここにいるだろうと教えてくれたと言う

「にしては、祭り会場からだいぶかかったな」
「オレ、2人の町、全然わからないんだ」
「ルイ、すぐ道に迷うよねー」
彩羽がつっこむ

「地理とか苦手そう」
いつもの彩羽がそこにはいて、ルイに対して言って、自分で笑っている
「彩羽もひとのこといえねーだろ」
「子供の頃、一番先頭で、歩いて道に迷ってたろ」
「そうだっけ」

ひとしきり、いつもみたいなくだらない話を久しぶりに3人でして、ルイが真剣な顔する

「今日中に会えてよかった」
「俺も」

2人の真剣なオーラに彩羽も黙る

「ごめん!!」
ルイと俺が同時に謝る

「えっ、あ」
2人が同時にはもるのを彩羽はこらえきれずに笑う

結局、ルイは勝手にサトに一樹のことを聞いてごめんということだった
俺は、ルイのこと考えられずに自分たちのことしか考えていなかったことを謝った

「オレは、一杯考えたんだけど、やっぱり会ったこともない人になんてなれない
だから、オレのままでオレらしく2人と付き合っていくよ

でも、ちゃんと3人のこと教えてほしい
彩羽が暗い顔するのも、けーすけが気まずい顔して黙るのも嫌なんだ
オレ、彩羽に初めて話しかけられたとき本当にうれしかった
転校生だし、なじみのない日本だし、ガイジンなんて珍しい目で見られるだけだと思ってたから
彩羽はみんなと違って、ちゃんとオレを見てくれて、自分の友達を紹介してくれて、けーすけもいいやつで

3人でいる時間がほんとに楽しかったからこれからも一緒にいたいなって思う
だから教えてほしい」

「ルイ、、、 」

「俺は、ルイに言ってないこと沢山あって、話さなきゃいけないって思った
サトが何を話したかははっきりとわからないから簡潔にいうと、俺と彩羽と一樹はいつも一緒にいた幼馴染なんだけど、中2の頃の今日7月7日に一樹は病気で死んだ

いつも3人でいたんだ
喜ぶのも、ケンカするのも、悲しむのも、笑いあうのも全部3人だった

中1の春に一樹が急に倒れて、それで病気が判明した
そこからの進行は早くて中2で死んだんだ

俺達はそのショックで1年間、何もできなかった
だから、7月7日のこの日だけ一樹を思い出してもいいことにしてある
だけど何かのはずみで時々、ふと思い出して暗い顔したりすることがある」

彩羽の目を見る
彩羽もうなずく

「俺達は、一樹の最後に間に合わなかったんだ」
そこでルイはえっという顔をする

「七夕祭の7月7日、この屋上で3人で花火を見ていた
そもそも、一樹を外に出す事態問題だったんだけど、一樹がどうしてもっていってたから外でみてたんだけど、一樹の病室に一樹を送っていくと、一樹が凄く冷たくなってたんだ
だから、心配になってあったかいものを買いに行っている間に一樹が急変して、そのままいったんだ

その日は祭りだったから病院近くのコンビニんのあったかいお茶が売り切れで、ちょっと離れたコンビニまで買いに行った
俺一人でもよかったんだけど、一樹が俺が寄り道するかもとかいじって彩羽もつけて一緒に買いに行ったんだ

だから、一樹が急変した時も俺も彩羽もそばにいなかった」

「私からも、ルイごめんね
こんな重い話、進んですることないし、でもどこかでルイは部外者だと思ってたのかもしれない
ルイがそんな思いをするくらいなら、早く言えばよかったね」

ルイが何にも言わずにぎゅっーと俺と彩羽を抱きしめた

「話してくれてありがとう」

ルイは俺と彩羽を離して、涙目で言う
「一樹がうらやましいよ」

俺と彩羽は顔を見合わせる

「だって、最後間に合わなかったって言っても、自分のために最後まで行動してくれてたんだよ?それに一樹の中には2人が持ってるものと同じ思い出が沢山あるんだろ?
それって一樹は凄く幸せだろ」

俺と彩羽がずっとみつけられなかった答えをルイがさらりと言う

彩羽はまた泣きそうで、でも「そうだね」と泣き笑いながら言う

かずのいない2人は寂しくて、世界はかずと俺と彩羽の3人しかないって思ってたけど、ルイと出会って、かずのいない3人じゃなくて、ルイのいる3人の世界もあるんだってわかったよ

「あっ!」
花火がラストという感じで一気に沢山打ち上げられる

「オレ、花火全然見てないし、七夕祭り、楽しみ損ねた」
「花火で聞こえない」
「来年は3人で出店回ろうよ」

かずとの3人組に縛られたまんまじゃ、それこそかずに怒られる気がした

俺と彩羽とかずの3人組は永遠不滅
でも俺はルイがいる3人組の世界も見てみたいんだ

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