[短篇集]きみが忘れたむらさきへ。


「ちゃんと見てるからさ、無駄になんかさせないから」


積み上げて来たものを、これから積み上げていくものを

見ていてくれると、言ってくれてる。


それ以上の言葉は発せずに、功はただわたしの手を握ってくれていた。


大雨で、殺風景なのにどこか温かみのある世界からも切り離されて。


こんな不安色の2人の空間でさ。


確かなものがここにはあって。


功の手も温もりも存在も。


全部わたしのそばにあるんだなぁって思ったら、ますます泣けてきた。


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