狂気の王と永遠の愛(接吻)を~イベント編~
「……、っ……え……? あ……」

 なにか凄いことを言われたような自覚はあるものの、拾ってもらったこの命、確かにその通りだと難しく考えてしまう。

(でも恥ずかしいっ……こんな、こんな小さな子供みたいに……っ……)

 ちぐはぐな頭と心に行き場のなくなった手をどうしようかと彷徨わせていると……

「喉が渇いたな……アオイ、すまないが――」

「……は、はいっ!」

 キュリオの言わんとしていることを察知し、彼の機嫌を損なうことなく抜け出すチャンスを得たアオイはハッと顔をあげ、キュリオの腕の中からそそくさと逃げ出した。
 そしてサイドテーブルを見つめて新たな問題が生じてしまう。

(お父様のグラスどっちだっけ……)

 気が動転していたアオイは自分の使用済みグラスを置いた場所をよく見ていない。
 幾ら父と言えど、一国の王が口にするのだから失礼があってはいけないと背後を振り返る。

(新しいの持ってこよう。たしか、扉の傍に……)

「…………」

 長い足を組み、頬杖をつきながらその一部始終を見ていたキュリオ。
 アオイが一歩踏み出すところでその腕を掴み、恐らく彼女が使用したであろう手前にあるグラスへ水を注ぐよう促す。

「で、でも……」

「それほど気になるのなら、いっそ口づけを交わしてしまおうか?」



 
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