狂気の王と永遠の愛(接吻)を~イベント編~
「……それがさ、…………」

 表情を曇らせた彼は、ようやく事の成り行きを話しはじめた。
 早朝にアオイの体調が悪いと聞きつけたカイ。そのまま幾度となく彼女の様子を見にキュリオの寝室を訪れていたが、騒がしくしていたために入室を制限させられてしまったというのだ。

(ほんと成長しないな……僕が思うくらいだからキュリオ様は相当お怒りのはず……)

「事情はわかったよ……けど。たぶんっていうか、絶対無理」

「えーっ! 諦めるのかっ!? "天才"の名が泣くぞ!!」

 力説する彼を横目に見ながらアレスは言いきかせるように声をあげる。

「……あのさ。君はまず魔法がどういうものか少し勉強したほうがいいと思うよ」

「!? 俺は頭使うの苦手なんだってっっ! 剣ならこう……体が自然に動くっていうかさ!!」

 そう言いながらカイは頭を抱えてジタバタと足踏みを繰り返す。その様子を見ながら"どうせすぐ忘れると思うけど"と、付け加えながら簡潔に説明する。

「キュリオ様の寝室はもちろん、アオイ姫様の部屋にも結界が張られているんだ。それくらい君も知っているだろう?」

「ま、まぁなんとなくは……」

「……剣術と違って、魔法はまぐれで強弱が逆転することなんてほとんど有り得ないんだ」

「ん? なんか馬鹿にされてる気がすんのは気のせいか……?」

「馬鹿にしてるわけじゃないよ。剣術や体術はその時の精神や相手を甘くみることで生まれる"油断"が勝敗を左右させることがあるだろ? 昔よく君がブラスト先生にやってたやつ」

「あっ……! 隙ありぃいいい!! のなっ!」

 幼い頃を思い出し、"してやったり顔"でニカッと笑ったカイ。身に覚えのある例えはとてもわかりやすく、快く耳を傾けた彼は手に馴染んでいたらしい木刀の感触を思い出しながら両手を握りしめている。

「もちろん魔術にも多少はあるけど、使い手から離れて独立した魔法はそれに該当しないからね。完全に術者の実力に依存するんだ」

「……仕掛けた悪戯(いたずら)が高度だと見破れないのと一緒か?」

「ねぇ、カイ。……君のせいで剣士たちの鍛錬がすごく幼稚なものに思えてしまうんだけど……」

 冷やかなアレスの視線をダメージもなく受け止めたカイは"お前も参加してみるか?"と鍛えた腕を誇らしく見せつけてくる。それを丁重に断りながら話をすすめる。

「高度だと見破れない……、それもあるだろうね。キュリオ様やガーラント先生しか使えない術もたくさんあるだろうし、見たこともない魔法を見破れる自信はないよ。まぁ知識はあっても実力がなきゃ使えないのと似てるかな」

「ふーん……魔法って奥が深いんだな。皆頭良さそうだもんなー……」

「…………」

 いままでの説明から"魔導師が頭良さそう"に行きついたカイの頭脳がどうなっているのか解明するには、彼の生い立ちから育った環境に至るまでを調べる必要がありそうだとアレスは結論付けた――。

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