狂気の王と永遠の愛(接吻)を~イベント編~

弁解の余地なし

 保健室へ入り鍵を閉めたアラン。彼は伊達メガネを胸ポケットにしまうと、長い髪を解きながらアオイにベッドへ座るよう促す。

(アラン先生、学校で魔法を使うことに躊躇いがなくなってきているみたい……)

 魔術の知識がほとんどないアオイは、突然自分の姿を見失ったらしいシュウに驚いたが、傍にいる人物がアランだけに異常事態にも納得するしかなかった。

「…………」

 大人しく言われたとおりベッドへ腰かけるアオイ。硬めのマットが緊張した体へ更なる筋を通す。
 アランはその動作を監視するように保健医不在のデスクへ寄りかかり、流し目でこちらを見ている。

「……わざわざ学校で体を休ませる理由が見当たらなくてね。お前を置いてきたつもりだったのだが……私の想いはどうやら伝わらなかったらしい」

「ごめんなさい、ご心配をおかけしました。
でも、ちょっと寝不足だったかなっていうくらいで……」

 置き去りにされたことを内心"やっぱり"と思いながら、過度に気を遣わせてしまったことと、少しの思い違いがあることに謝罪を込めて弁解を図った。
 しかし――

「その顔色で言われても説得力がない。私の目には睡眠不足が引き起こした体調不良以外の何ものでもないのだから」

 強い口調で責めるアランの手が伸びて、ひんやりとした指で顎を掴まれてしまった。

「……っ!」

(……言い返したいのに言葉で勝てる自信がないっ……)

「故に判断を誤る年端もいかない子供を管理するのは親の役目だ」


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