狂気の王と永遠の愛(接吻)を~イベント編~

"謁見"が存在しない日

ほぼアオイの唇に触れているような…わずかに横に反れたキュリオの唇が優しい口付を落とす。


「…っ…!!」


(…な、なんか…お父様の愛情表現がだんだん…っ…)


親子以上のものになってきている、と違和感を唱える暇もなくキュリオの声がかかる。


「なるべく人の目の届かないところへ行こう。湖でボートを出すのが理想だな」


「…?お父様このあとお仕事があるのでは…」


王には休みがない。
学園の副担任として王と教師を兼任する事になった彼にはとにかく時間がなかった。平日、城に戻れば王としての執務が待っており、休日は王に謁見を願い出ている者たちへと時間が割かれている。
そのため、アオイにかける時間が長ければ長いほど彼の負担は大きくなっていく。


「人と会う約束はしていないし、執務は明日でも構わないものばかりだ」


「……」

(休日にお客様が来ないのって珍しい…)


「…不思議そうな顔をしているね?」


「はい、珍しいなと思って…」


「…今日に限っては目的が違うだろうからね」


キュリオはうんざりするようにため息をつく。
そこでアオイは先程のキュリオらのやりとりを思い出した。


『本日もまた女神様方を始め、貴族や町娘らから贈り物が山のように届いております!』


『もうそんな時期か…』


『…ひとつ残らず孤児院へ。例外はない』


この特別な日にキュリオへと謁見を求める女性は星の数ほどいるのだろう。しかし、それを良しとしない彼は最初からこの日の謁見を禁じているのだ。




「だから心配しなくていい。二人だけの時間を過ごそう―――」




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