生チョコレートの魔法が解ける前に
 麻里の言葉に、ついムッとしてしまう。

「そんなことないよ。あれで大輝、結構いいところもあるんだから」
「そう?」

 麻里が興味なさそうに言って立ち上がった。隣の椅子に置いていた大きな紙袋を取り上げる。

「んじゃ、チョコ配りにいこ」
「ん」

 私はあまり乗り気じゃなかったんだけど、麻里がこういうのが大好きなのだ。男子に義理チョコを、女子に友チョコを一緒に配ろう、と誘われ、こうして付き合う羽目になった。でも、どうせ本命チョコを渡せないなら、義理チョコと友チョコでバレンタインデーの雰囲気だけでも味わおう。

 私はため息をのみ込み、麻里とともにチョコを配りに出発した。
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