ただ、それだけのこと
ただ、それだけのこと


「都築君って、何考えてるのかな」


唐突にそうつぶやいた先輩が、こちらをチラリと見上げてくる。

答えを求めるその視線を無下にする事も出来ずに、

「そうですねぇ……」

と、考える風を装って、例の彼に視線を向けた。

こうやってジッと見つめても、何も言われないのはマネージャーの特権だ。


……うん


「あたしには、キャプテンを尊敬してる事と、叶多(カナタ)先輩を好きなことくらいしか分かりません」


ニコリと微笑みながらそう告げた。

あたしが彼について分かることなんて、それぐらいのもの。


「それは見てたら誰でもわかるよ〜」


そう言って笑った先輩は


「本当、都築君はカナちゃんのこと好きだよね〜」


そう続けた。

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