逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

「基……」


 基に対して言いたいことはいっぱいあった。

 
 まず、今までずっと、惹かれていたはずなのに、基の気持ちにはっきりと応えることができなかったこと。
 そして美鶴とのことは誤解であるということ。
 迷って、悩んで、それでもやっぱり、基の腕の中に飛び込めないと思ってしまったこと……。
 謝りたいと思うことはたくさんある。


 緊張でワナワナと唇が震える。


「私……好きでいてもいいの……?」


 けれど結局、沙耶の口から出たのは、その一言だった。


「沙耶」


 基は降下するエレベーターの中で沙耶の顔を覗き込む。


「もう一回、言ってくれよ。意味がよくわからないから」


 わからないとは明らかに嘘である。わかっていて、はっきり言わせようとしているのだ。

 沙耶はそんな基の甘い意地悪に照れて伏し目になるが、こわごわと基を見上げて、尋ねた。



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