逆境シンデレラ~御曹司の強引な求愛~

 基の言うように、昨晩はほとんど寝られなかったのだ。
 今は少しでも体を休めて、体力を取り戻し、それから自分にできることを考えたほうがよさそうだ。


「じゃあお言葉に甘えて少しだけ休ませてもらうね……ありがとう」

 
 頭につけたままの三角巾を外し、一つに結んだ髪をほどいて、指で軽くほぐしていると、基が手を伸ばし、沙耶の首の後ろに手のひらを回して体ごと引き寄せる。


「も、基……?」


 基の顔が徐々に近づいてきて、思わずドキドキしてしまった。


「沙耶、可愛い……」
「えっ?」
「ありがとうって、今の言い方、ものすごく可愛かった。ときめいて死ぬかと思った」
「そっ、そんな大げさな……」


 まさか『ありがとう』の一言でこんなに熱っぽく見つめられるとは想像もしていなかった沙耶である。

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