ただのジャンケンDeath(デス)
「おい、奥田。お前上中とジャンケンしろよ。



このゲームは自主制ありなんだからよ。



ほら、速く!」







クラスの中でも比較的に臆病でいじめも受けていた奥田 隼人(おくた はやと)に乱同が声をかけた。







そう。このゲームは一日一回だ。






だから速く終わりたければどんどん自主制でジャンケンしなくてはならない。





今、それを乱同は奥田に半強制で提案しているのだ。





それも、やらなかったら殴り殺すとでもいうような雰囲気でだ。





奥田とジャンケンをさせようとした人は上中 秋(うえなか あき)。




おとなしいといえばおとなしい女子だ。






上中は小さく震えている。





おそらくこのままでは上中と奥田がジャンケンをしなくてはならなくなってしまうだろう。




奥田は何かを願うように両手を固く重ね合わせている。





その状態が5分ほど続いた。





ついにしびれをきらした乱同が吠える。








「いいかげんにしろ!さっさとしやがれ!たかがジャンケンなんだぞ!」







そう思うなら自分でやればいいと思ったがいわないでおこう。









「これでお前ら二人がジャンケンして負けてもあいこでもなんにもならなかった。そうなってバカらしいで家に帰るんだろうが!」









驚いた。






まだ現実を受け止めきれてなかったようだ。





そんなことになるはずがない。






もし、そうなったらどれほどよいか。






それでもただ両手を握りしめている奥田にいらつき、とうとう乱同が右手を振り上げた。





それを見て奥田は何もできず、身を固くして、ぎゅっと目をつむった。





誰でもこの後に何が起きるかは分かる。




殴られる。





乱同の固く握られた右手の拳が奥田の顔に吸い込まれるように運ばれていく。





クラスメイト達はただそれを見つめるだけだ。





止めたら自分が殴られることになるし、標的が自分になる危険もある。





そんなマイナスにしかならないことなんて誰もしない。




乱同の拳が奥田の顔面にあたる直前だった。




モニターが光った。



全員の注目がモニターに変わる。
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