『N』ー忍びで候うー
28.目が覚めて
「一花は?」

ロッジに戻った郷太が大きな荷物をどさっと降ろした。部屋には次郎しか見えなかった。郷太は大方そうだろうと思いつつ、聞いてみた。


「七花の傍にいる。」

「もしかしてあれからずっと?」

頷いて見せた次郎に、郷太は首を小さく横に振った。

先代と七花を救出してからもう10時間近くが経っていた。

「信じられない。。
一花らしくないっていうか。。」

「俺も驚いてる。」

次郎が頷いた。

「だって、一花っていつもクールで冷静で人のことには関与しないみたいな、、」

2階を見上げる郷太に次郎がその肩を叩いた。

「まあまあ、『関与しない』って、そんなに?」苦笑。

「あ、ごめん。」

「郷太が言うならそういう風にも見えるんだろうな。周りからは。
結構いいところあるんだぜ、あいつ。

外面なんて俺は気にしないけど、いつも最後までしっかり見ててくれたり、ここってところで助けてくれたり、熱いところが。

だから七花のことも、弟子みたいな、責任感みたいなの感じてんじゃない?

ま、俺ら兄弟みたいなもんだしな。
中身ばっか見えちゃうのかもな。」にかっと笑うと次郎はがさがさと郷太の持ってきた大荷物を探り始めた。
「お、うまそうなの発見♪」

「ねえ、でもさ、七花に対して一花の行動って素早すぎない?違う意味でこう、、

守ってるみたいな。ねえ?」

「んー、内面は熱い男だからさ。
あいつ、七花の特訓見てやってたんでしょ?
弟子、弟子。弟子みたいなもんなんだよ、きっと。」

そういう次郎に、郷太は自分と通じるノリの良さを感じていた。それがどこまで本心かはわからないけれど、、

「ま、いいや。俺、これ届けてくる。
頭首からの差し入れ。」

「ほーい。」


階上に向かう背中を見送り、次郎はふうっと小さく息をついた。心の中で。

『一の熱さは知ってるけど、今回みたいな熱さは俺だって、知らなかったなあーーー。』



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