『N』ー忍びで候うー
29.再会
ぴ、ぴ、ぴ、、
白い部屋、消毒薬の匂い、せわしなく画面に数字が現れてはグラフが描かれていく。

部屋に明るい陽射しが入り込んで来ていた。
医師の検査が終わったばかりの雅臣は、ベッドから身体を起こした。

「あなた、もう少し寝ていて。」
止める紀子の言葉に首を振った。

「いや、私よりも、あの子の様子はどうなんだ。一花が抱いていったが、怪我の様子は?
あの小さかった、、あの子が、、」

「ええ、希代香も無事ですよ。」
頷いた紀子は、堪り兼ねて目頭を押さえた。

「少し休んで、会いに行ってやってくださいな。どれだけ、心配していたか、、、」
最後の方は溢れた涙で途切れてしまった。

「心配をかけたな、、」
雅臣は紀子を抱きしめた。




15年ぶりの夫の腕の中、紀子は心底望んでいた夫の帰還に震えるほど安堵していた。これが夢でないことを祈るような気持ちで、夫の背中をぎゅっと握った。
「もう、、置いてっちゃ嫌ですよ。」

「ああ。」


微かに廊下を勢いよく走る足音と、何人かの声が聞こえてきていた。
「子供たち、来たみたいですよ。」
「もう、子供って歳じゃないんだろうなぁ。」

紀子は雅臣を見た。
「やだ、私たちもですよ。ふふ。」

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