たった一度きりの青春は盛りだくさん
和希の手元にはまだ3つ残ってるけど、自分が食べようと思って買ったんだよね。
だったら、私がもらっちゃったら和希がお腹空いちゃう。
「俺には母さんが作ってくれた弁当もあるし、本当はこれだけあれば足りるんよね。
やけん、ほら、受け取れって」
半分押し付けられるような感じで渡されて、私はとうとう受け取った。
ということは列に並ぶ理由はなくなった訳で、急いで列から抜けて和希と一緒に上の階に向かう。
えっと・・・値段シールは全部100円か。
3つもらったから、300円だ。
ちょうどあるかな。
パンと水筒を落としてしまわないようにお財布の中身を確認する。
あ・・・500円玉しかないや。
「ごめん和希。
今ちょうどないけん崩してから返すね」
私が少し先を歩く和希を見上げながら言うと、和希はちらっと私を見てまた前を向いた。
「良いって。
そんなんで奈々から金とったら俺が母さんに怒られる」
確かにおばさんは私に甘いけど、だからって、返さない訳にはいかない。
どうしよう。
「あ、じゃあ、達川がくれたって飴ちょうだい」
私は音楽室に、和希は4組に向かう角に来た時、和希は手を差し出した。
達川くんがくれた飴って、何日か前のことだし、もう食べちゃったよ。