セシル ~恋する木星~


そして、最終日のこと。
夕方、美術館からホテルに戻って来たセシルと直子に、思いがけないラッキーな話が降ってきた。

現地ガイドの山口義彦がちょうどロビーにいたので、美味しいお店を尋ねたところ彼からこんな返事が。

「よかったら、連れて行ってあげるよ。僕も今日はひとりだから、一緒にどう?」

「え〜? 本当ですか? ぜひお願いします」

セシルは即答していた。
ちらっと直子のほうを見ると、少し迷っているような顔。

「じゃ、七時に車で迎えに来るから。ロビーで待っててくれる?」

「はい。ありがとうございます。助かります。よろしくお願いします」

セシルはにこにこして山口を見送ると、部屋に戻るため、直子とエレベーターに乗った。



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