『それは、大人の事情。』【完】
✤ 限られた時間


「ふーん、で、モデルになるって言ったんだ」

「うん、初めは断ったんだけどね。どうしてもって言うからOKした」


月曜日、佑月とランチで訪れたうどん屋さんで、ぶっかけサラダうどんをすすりながら真顔で頷く。


「でもさぁ~妙な話しだよね。あのハーフボーイが声を掛ければ、いくらでもモデルになってくれる女子は居るはずなのに、どうして梢恵なのよ? まさか……アンタ達……」

「な、まさかって何よ? 変な事考えないでよね。私とあの子はなんでもないんだから」


さすがに親友の佑月でも、白石蓮の事が好きになってしまったとは言えず、話しを濁す。


「それで、モデルってヌード?」

「ちょっ……なワケないでしょ?」

「な~んだ。違うの? 私はてっきりヌードだとばかり……でもさ、今流行ってるらしいよ。若い内に自分のヌード写真撮るの。この際、いい機会だから梢恵も二十代最後の記念に脱いじゃえば?」


なんてヤツだ。完全に面白がってる。


ニヤけた佑月に「バーカ! 脱がないよ」って、すました顔で言ったが、内心穏やかではなかった。だって、どんな写真を撮るかなんて聞いてなかったから。


まさか、違うよね。でも、ホントにヌードだったらどうしよう……


「まぁね、梢恵ももうすぐ部長と結婚するんだし、裸は部長以外には見せないって事か……セフレしてた時はどうなる事かと思ったけど、やっぱ、ホントに好きな人が出来ると女は変わるんだね」


佑月ったら、勝手に決めつけて納得しちゃってる。


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