『それは、大人の事情。』【完】
あぁそうだ。佑月はもうすぐ結婚して会社を辞めちゃうんだ。入社以来、八年もの長い間、私達はいつも一緒だった。一緒に居るのが当たり前過ぎて、佑月が居なくなった後の事なんて想像も出来ない。
「佑月は結婚しても仕事を続けるって思ってたから意外だったな。修が辞めろって言ったの?」
「うぅん、彼は続けていいって言ってくれたんだけど、私が辞めるって言ったの。私、不器用だからさ、仕事と家庭の両立は無理っぽいのよね。
それに、今まで結構マジで働いてきたからさ、ここらでちょっと楽させてもらおうかな~なんてね」
「ふーん、でもさ、子供がデキたら仕事してるより忙しくなるよ。楽なんて出来ないんだから」
そう、ほんの二週間だったけど、ママ代わりをして分かった事。子育てって難しい。日々、自問自答の繰り返し。こっちの思い通りになる事なんて殆どない。
「でも子供って、最高に可愛くて、愛しくて……佑月も早く子供作った方がいいよ」
そう力説する私を見て、佑月が「梢恵がそんな事言うなんて、キャラじゃないよ」って、笑ってる。
そうかもしれないね。少し前の私は、子供なんて面倒でうっとおしいと思っていたもの。でも、沙織ちゃんと出会って分かったんだよ。私にも人並に母性ってモノがあったんだって。今は、すぐにでも子供が欲しい。
「で、梢恵の方はどうなの?お互いの親とは会ったの?」
「うぅん、真司さんのご両親には近々会う事になってるんだけど、私はまだ親に彼の事言ってなくて……」