『それは、大人の事情。』【完】
✤ 愛すればこそ


マンションに帰ったのは、午後三時過ぎ。真司さんが会社から帰るまでにここに戻って来るという約束は守る事が出来た。


フラれた蓮から解放されたからか、それとも戻るべき場所に戻って来たからか、脱力感が半端ない。


ヒールを脱ぎ捨て、玄関にキャリーバックを放置したまま重い体を引きずりリビンクに向かう。


結局、私の居場所はここしかないんだ―――そう思うと、真司さんに申し訳なくて、嘘を付いた事を激しく後悔した。


冷静になって考えてみれば分かるはずなのに、私、どうかしてたんだ。


リビングのクーラーを入れてソファーに寝ころぶと、まるで抜け殻みたいに虚ろな目で宙を見つめる。すると、無意識の内に涙が溢れてきて、視界が霞んでいく。


この涙は、なんの涙なの? 蓮にフラれたから? それとも真司さんのへの贖罪の気持ち? そう考えてる自分がイヤで仕方ない。


完全にフラれたんだもん。もういい加減、蓮の事を考えるのはよそう。うん、これで良かったと考えないとダメ。


私は真司さんと結婚して幸せになるんだ。そう、誰よりも幸せに……その為には蓮の事を忘れなきゃ。何がなんでも忘れなきゃいけないんだ……


さよならだよ……蓮。今日で本当にさようなら……でも、君が立派な写真家になるの願ってるから。それと、もう一つ。


―――私を愛してくれて、有難う。


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