『それは、大人の事情。』【完】

怒りに任せ、佑月に「そんなセフレのいる男なんて、やめちゃいなさいよ!」と怒鳴っていた。


もちろんそれは、親友の佑月を悲しませた修を許せないと思ったから出た言葉だった。けど、佑月にはそう聞こえなかったようで……


「……セフレしてる梢恵が、よくそんな事言えるね?」というキツい一言が返ってきた。


「えっ……」

「梢恵は誰にも迷惑掛けてないなんて呑気な事言ってたけど、実際にセフレの存在を知らされたらどんな気持ちになるか……アンタ、分かってるの?」


なんだか話しが違う方向に向かってる。話しを戻そうと口を開くが、私も心のどこかで後ろめたい気持ちがあったからか、次の言葉が出てこない。


佑月にとって、同じ事をしていた私も同罪。憎しみの対象になっているんだ……


気まずい雰囲気の中、佑月はそれほど強くないお酒をがぶ飲みし、あっという間に冷酒の瓶を三本空にしてしまった。


「佑月、ペース早過ぎだよ……」


心配して声を掛けるが、完全に酔っぱらった佑月は聞く耳を持たない。


「ねぇ、セフレの立場で答えてよ。自分の存在が相手の彼女にバレた時って、どんな気持ちなの?」

「それは……」


最高に答え辛い質問に「私は、そんな経験ないから……」そう答えるしかなかった。


「ふーん……でも、そう思ってるのは、梢恵だけかもしれないよ。ホントは、バレてたかもね」


その意味深な言葉にドキッとする。


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