それは、小さな街の小さな恋。


「初子さん、どう?」

「あっ、ええ、だいぶ元気になりましたよ。退院も来週になりそうって担当の先生が。」

「良かったわね。」


安心したようにそういう加代さんにも、後ろで嬉しそうに頷く看護師さんたちにも迷惑かけたな。


「あっ!かのちゃん、良かったら。」

「え?栗ですか?」


突然ごそごそとし始めた加代さんが、渡してきたビニール袋の中身は、なんと栗。


「ええ。お隣さんにたくさん貰っちゃって。うちじゃ食べきれないから。」

「ありがとうございます。美味しそう。加代さんは何にしました?」

「マロングラッセ。」

「え、すごい。さすがですね。」

「娘がどうしても食べたいって言うからね。でも既製品を買った方が確実に安くついたわね。」


さて、私はどうしようかな。

そうだ。あれにしようかな。


< 113 / 153 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop