きみと恋の話をしよう
あとは、目!
目を確認したい!

すると、ようやく佐橋先輩がゆるゆると目を開く。

バッグの中身がこぼれそうなことに気づいたようだ。
特に文庫の中表紙が丸見えなことに少し焦った表情をした。

私は何食わぬ顔で、正面を見ていた。横目で様子は見守る。


「次は老川一丁目」


降りるバス停が近づいてきた。
ボタンを押し、間も無くバスがストップする。

私は立ち上がり、あくまで視界に入りましたという体で、佐橋先輩の顔を見た。

たぶん間違ってない……と思う。

メガネの奥に見た綺麗な二重の瞳は、佐橋先輩と同じだ。


ふらつく足取りでバスを降りた。
驚きと納得で、クラクラする。

うわぁぁ、王子様・佐橋先輩のすごい趣味を知ってしまった!
バイトが手につかなさそう!


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