不倫のルール
「ハァ~……」と柴田さんが、大きく息を吐いた。

「繭、その顔反則!」

「え?」私、どんな顔をしているの?思わず両手で、両頬を挟んだ。

「そんな瞳ウルウルで見つめられたら、いろいろ抑えが効かなくなるから!」

そんな事を言われたら、顔が熱くなる……!

「……賢人……さん」

勇気を振り絞って、ようやく名前を呼んだ。でも、呼び捨ては無理!

「ん?……もう一回、呼んでみて」

「……賢人、さん」「さん?」「これ以上は、今は無理です!!」

恥ずかしくなって、柴田さんの胸に顔を付けて隠した。

「繭、可愛いけど……俺の理性、崩壊しそうだけど、いい?」

ハッ!として、柴田さんから顔を離した。

柴田さんの瞳は、今まで私が見た事のない熱っぽい色を孕んでいた。

「し……賢人さん、少し休みましょう。ゆっくりしたら、賢人さんが今暮らしている町に連れて行ってください。……今日は、賢人さんの部屋に泊まってもいいですか?」

賢人さんの熱を感じながら、ゆっくりと自分の気持ちを伝えた。

ずっと、受け身だった私の恋愛……でも、本当に求めるものは、想いを口にしなければ、自分から手を伸ばさなければ──掴む事は、できないのだろう──

賢人さんの喉仏が、大きく上下した。

私の瞳にも、抑えきれない熱が宿っているのかもしれない。

「……わかった。部屋、あんまりきれいじゃないけど……今は、なんの準備もしてないしな」

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