オオカミくんと子ブタちゃん
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昼食が終わってから山頂を目指し歩き出す。

午前中は楽しい山登りだったのに、今は一歩一歩がとてもしんどい。

優衣は他のグループに混じって少し前を歩いている。

私も別のグループに声をかけられて、その子達と登る事になった。

優衣に嫌われちゃったのかな?私…

血の繋がりがない男の人と一緒に暮らしているのは、まわりから見るとやっぱり変だと思うよね?

そう思うとあの時、パパの手を取ったのは間違いだったのかも知れない…

施設に入ってた方がみんな幸せだったのかも…

どんどん気持ちが沈んでくる。

なんだか身体も怠くて重い。

「おい、大丈夫か?子ブタ。」

少し後ろを歩いていた大賀見が声をかけてきた。

「…大賀見?何が?」

「何がって……。お前、顔色が悪くねぇか?」

「別に。気のせいじゃない?」

「ちょっと、デコ見せろ。」

大賀見の手が私の前髪に触れそうになった時

「はっるとくーんっ!」

白咲くんが後ろから突進してきて、大賀見に体当たりした。

「なんで先に行っちゃうのさー。一緒に楽しく登ろうよー。」

「お前…うざっ。」

大賀見は白咲くんを一睨みして、スタスタと白咲くんを置いて歩いて行ってしまう。

「あー、冷たい。でも、俺は絶対に諦めないー。」

そう言って白咲くんは、大賀見を追いかけて行った。

そんな二人のやり取りを、周りの女子はキャーキャーと言いながら見て楽しんでいた。

何が面白いのか私には理解不能だな…。

小一時間歩くと頂上に着いた。

そこからみる景色は、とても素晴らしいものだった。

緑の向こうにはミニチュアみたいな建物や車が見える。

建物の奥には青くキラキラと光る海。

風も空気も澄んでいて、とても気持ちがいい。

皆んな思い思いに休憩をしてから下山していく。

優衣はもう他のグループと下山したのか、辺りを見回しても姿がなかった。

私もそろそろ出発しようと歩き出すと、

「小辺田さん、一緒に下山しない?」

声をかけられ、振り返るとニッコリと微笑む滝沢くんがいた。

さっき告白された事を思い出す。

なんか、気まずいな……。

「……うん。」

「じゃ、行こうか。」

滝沢くんと二人で山道を下って行く。

早く返事をしないといけないよね?

でも、今は優衣の事で頭が一杯で、正直そんな気持ちになれない。

私が俯いたままでいると

「返事はゆっくりでいいよ。」

そう言って滝沢くんは、私の頭を優しくポンポンとした。

「もしかして、それを言うために声をかけてくれたの?」

「ううん、ただ僕が小辺田さんと一緒に下山したかっただけだよ。」

ニッコリと微笑む滝沢くん。

いつも滝沢くんは「自分がそうしたかっただけだ」と言って、私に気を使わせないようにしてくれる。

私が階段を踏み外した時もそうだったよね?

私が落としたプリントを「自分が拾いたいだけ」って言って、しかも教室まで全部運んでくれた。

滝沢くんは優しい人。

すごくモテるのに、私なんかの何処がいいんだろう?

「……私なんかの…どこが良かったの?」

頭がボーとするせいか、思っていた事をそのまま口に出してしまった。

「ご、ごめんっ!さっきの無しっ!気にしないでっ///」

我に返り慌てて訂正をするが、聞き入れてはくれなかった。

「もちろん、見た目も好きだけど…
一番は、心が強いところかな?」

滝沢くんは、そう照れながら言った。

"心が強い?"

ごめん、滝沢くん……

本当の私はとても臆病で……

全然、強くなんてないんだよ。

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