初恋フォルティッシモ

勇佑は、別れたくないユリナにそう言った。

それでもユリナは絶対別れたくない。

だって勇佑のことがこんなに好きなの。

突然押し掛けたあの夜だって、幸せだった…のに。


自分でもびっくりするくらい、これでもかってくらいにいっぱい泣いた。

だけど勇佑は冷たかった。


独り残された玄関。

ハンバーグが焦げたような、微かな匂い。

包丁で誤って切ってしまったいくつかの指。

そして、その指にはまっている…大事な指輪。


…許せない。

誰なの?

ユリナから勇佑を奪った女っ…。


少し考えると、ユリナはその時、この前勇佑の部屋で見つけたプリクラのことを思い出した。



“ねぇ何このプリクラー。チューしてて可愛いんだけどっ”


“ちゅー…?


…!!ばっ、それ返せよ!”


“お前には関係ないだろ!”

“あるよ!だってこのコ、勇佑の元カノでしょ!?”

“っつか、麻妃先輩は…”



…麻妃…。



“今は、他にちゃんと心から想える人がいるんだよ”

“俺はユリナじゃなくて、その人を大事にしたい”



「…っ」



涙がまだ、こぼれ落ちる。

不安が現実になってしまった。

…勇佑の嘘つき。

愛してるって、言った。言ったのに…。



ユリナはその夜の出来事があまりにショックすぎて、ムカついて。

その翌日から、勇佑の想い人を調べることにした。
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