初恋フォルティッシモ

…………



「じゃあねー三島くん、」

「はい。お先です」



それからしばらく皆で飲んで騒いで、久し振りに楽しいひとときを過ごした。

二次会にカラオケに行くか、という話になったけど、俺は「終電があるから」と断って居酒屋を後にする。


…けど、そんなのは嘘。

終電なんてとっくに過ぎてるし…っつかそもそも、今日は電車ではなく自家用車で来たのだ。

麻妃先輩がいたら、カラオケにもちゃんと参加していたかもしれないけど。



「……やっぱ、そんな上手くはいかねぇか」



俺は独り車に戻ると、急に静かになったそこで悲しく笑う。


今住んでる独り暮らしのマンションに、吹奏楽部の同窓会のハガキが来た時、俺は夢でも見てるんじゃないかと思った。

だって同窓会とか考えもしなかったし、内心麻妃先輩とはもう会えないと決め付けていたから。


嬉しかった。


もしも、これから先本当に会えることがあるなら俺は麻妃先輩に謝りたい。

“あの時のこと”を、ちゃんと……。


俺は心の中でそう呟くと、軽く息を吐いた後やがて車を発車させた。









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