スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
「春木さん。」

すっかり帰り支度を終えたヒナが、撮影機材を抱え走り寄ってくる。


「終わった?読み聞かせ」

「ハイ」

「さすが元書店員。手懐けてくれて助かった」

「あ、私お店で絵本も担当してたので……」


そう言って照れたように笑う。
ほわんと柔らかな空気が今は心地良かった。


「……何かホッとするよ。お前ののんきな顔見てると」

「え!?」


ヒナの手から機材を奪い取り、彼女の髪をくしゃくしゃに乱す。
うわぁ、と間の抜けた声が耳に届いた。



「帰るぞ。」




もっと遠くへ行くために

知らない景色を見るために

ここからまた歩き出す。
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