スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
名前は知らないが、挨拶もろくに返ってこなかった記憶がある。

受付のくせに無愛想な奴だなと思っていた。
どうせアルバイトだろうと気にしていなかった。

俺の撮影にいつも同行しているヒナの事も、当然目にしていただろう。


どういうつもりだ?


怒りが沸々とわきあがってくるのを感じる。



「うちのアシスタントに恨みでもあんの?それとも何?あいつが好きなの?」



男は俺を睨みつけたまま何も答えない。

転んだ時に擦りむいたのか右手の甲から血が流れていた。
それに気をとられた一瞬の隙をつき、男は俺の手を振り払って逃げようとした。


「まだ話は終わってねんだよ、」


再び強い力で腕を掴み、無理矢理道路に座らせる。


「次やったら通報するからな。ていうか、」

「……」

「次がもしもあったら。俺、あんたに何するかわかんない」
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