スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
ふいに、部屋の入り口の方から息が漏れ出たような笑い声が聞こえた。


「え?」


思わず後ろを振り返る。


「は、春木くん!」


二人の面接官が慌てたように資料を用意し始めた。


「いつの間にそこに……もう少し早く来てくれないと困るよ!キミのアシスタントの面接だろう!?」

「すんません。寝てました」


肩を震わせて笑っていたその人は、やがてゆっくりとこちらへ歩いてきた。

赤いTシャツに、履き古して片方の膝が破れているジーパン。
柔らかそうな黒髪は、いかにも寝起きらしい乱れ加減だ。

TPOに応じた服装にはとても思えなかったけれど
私は、彼から目が離せなかった。


「……」


この人が春木リョウなんだ

ずっと憧れてた、
春木リョウなんだ……


まるで夢の中にいるみたいにボーッとしてしまって意識がハッキリしない。

そんな私と目が合うと
彼は口の端だけで笑った。
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