スローシンクロ 〜恋するカメラ女子〜
春木さんに名前を呼ばれ
反射的に振り返った。

濛々と立ちこめる黒煙に視界を奪われ、姿は見えないけれど
春木さんの声だけははっきり聞こえた。



「おい!戻ってこい!!」



身を屈め、手探りで会場内を進む。

容赦なく襲い来る熱風で喉が焼け、息が上手く吸えない。

怖い。熱い。苦しい……。

でも気持ちが途切れたらお終いだ。

春木さんの悲しい顔は、もう二度と見たくないんだ。



だって、私は


私は



「ヒナ!!!」



ごめんね

春木さん。
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