世界は案外、君を笑顔にするために必死だったりする。-deadly dull-
次の日の朝。

駅から学校までの道を歩いていると、「ひよりん!」と呼び止められた。


「ん?あぁ、有理か、ビックリした」


有理はクラスで目立つ存在。
翡翠はあまり気が合わないだろうな、と言っていたけど、有理はそこまで話しかけにくい子じゃない。


「おはよ!ひよりんに会えると思わなかったよー!」


女の子らしくて小柄。
翡翠よりも上の辺りで結んであるツインテールは有理が動く度にピョンピョンと跳ねる。


「ねぇねぇひよりん」

「何?」

「坂瀬くんってカッコイイよね!」

「どしたの急に」

「ひよりんは思わないの?坂瀬くんがカッコイイって!」


有理は首を傾げて私を見る。


「うーん、分からなくはないけど」

「だってだって、坂瀬くんって完璧じゃん!優しいし、運動も出来る!」

「あぁ、確かによく言われてるね」

「もー、ひよりんってクールだなぁ」


頬を膨らませて私を睨むような表情をする有理。

有理は可愛いし、人気者。
男子で言う一番の人気者が坂瀬くんなら、女子で言う一番の人気者は有理なんじゃないかと思う。


「そういえば、何で突然坂瀬くんの話したの?」

「え?...あぁ!!」


私の質問に、有理は一瞬悩んで声をあげた。


「な、何!?」

「いたんだよ!そういえば!」

「いたって?」

「坂瀬くんが!電車に!」


有理はガクッと項垂れるようなジェスチャーをして見せた。

なるほどね。
坂瀬くんも電車通学なんだ。


< 13 / 154 >

この作品をシェア

pagetop