世界は案外、君を笑顔にするために必死だったりする。-deadly dull-
「わ...っ」


突然のことに驚きながらも、私はどうにか彼の体を支えた。

彼はふらつきながらも体勢を直し立っていて、倒れずに済んだ。


「危ないじゃん、突然何...」


そこまで言って、気づいた。
彼の体の尋常じゃない熱さに。


「えっ、熱あるじゃん」

「...っ、悪い。次、生物室だよな。...行かなきゃ」

「馬鹿じゃないの、こんな熱で無理に決まってんじゃん!」


私は彼の体を支えたまま、離さなかった。


「離せよ。俺は行かなきゃいけねーんだって」

「アンタが行かなきゃいけないのは保健室!ほら、仕方ないから連れていってあげる」

「いいっつってんだろ、頼むから...頼むから天馬のとこに行かせろよ...っ」

「坂瀬くん?」

「俺が、俺がいてやらねーと...」


青柳颯太の焦りがうかがえる。

いつもの冷静さからは感じられないほど、彼は取り乱しているように見えた。

それは、多分熱のせい...?

でも、この熱では生物室に行くのすら難しい。


「坂瀬くんのことは分かんないけどさ、今はアンタが一人じゃ駄目そうに見えるんだけど」


私がそう言うと、彼は少し傷ついたような、でもどこか安心したような表情になって、何も言わず、私に体重を預けてきた。

それでもまだあまり重くないのは、彼が遠慮をしているからだろう。

それから彼は何も言わず、保健室まで大人しく私に連れていかれていた。
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