サイレント・キス 〜壁越し15センチの元彼〜
不倫


「お疲れ様です」

「あ、凛花ちゃんお疲れー」


約一時間の残業を終えた私、松本凛花(まつもとりんか)は、まだ残業中でパソコンと向き合っている薄茶色の髪をした女性に声をかけた。

くるりとイスごと回転してこちらを向いたのは、大きな目が特徴的で可愛らしい北沢麻里子(きたざわまりこ)さん。

北沢さんは、私より三年長くこの文具を取り扱う会社に勤めている。可愛らしい見た目とは反してサバサバとした性格の28歳。因みに、バツイチらしい。


「凛花ちゃん、今日は手伝ってくれてありがとうね。おかげで予定より早く終われそう」

「そうですか。それなら良かったです」

「今度ランチ奢る。それじゃあ、気をつけて帰りなね」

「はい。ありがとうございます。お疲れ様です」


北沢さんにぺこりと頭を下げて、オフィスを背にする。

オフィスの扉を閉めるとほぼ同時にポケットで震えた私のスマートフォン。それを取り出し、メッセージを確認した。

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