イレカワリ
☆☆☆

保健室には先生の姿がなかったので、あたしは勝手に氷水を作り歩の頬に当てた。


「さっきはごめん。力入れ過ぎた」


歩の目を見ずにそう言う。


歩はフンッと鼻で笑うと「わざわざ謝るなんて、お人よしだな」と、言った。


「あたしはあんたなんかと違う。人を傷つけた時に謝る事くらいできる」


「へぇ、随分優秀なんだな」


歩は人を小ばかにしたような口調でそう言った。


その口調にあたしの苛立ちは加速する。


あたしは歩を置いてそのまま保健室を出た。


もう今日の授業なんてどうでもよかった。


歩と同じ空間にいるだけで我慢ができなさそうだ。


それよりも、あたしは自分の身を守る事を考えなきゃいけない。


あたしは一旦教室へ戻り、鞄を掴んだ。


クラスの女子生徒たちがヒソヒソと何か話しているのを聞きながら、早退したのだった。
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