恋するBread*それでもキミが好き
おからロールさんは、私がこの店で働き始める約一年前にはすでに常連だったらしい。

おばさんは『あんまり覚えてないけど、多分二年くらい前からきてるかなー?』と言っていた。
毎日とはいわないけど、かなりの頻度でお店に足を運んでくれている。


確かに毎朝、今日は来るかな?と楽しみにしてる自分もいるけど、これが恋かといわれたら、それは多分違う。

そう思う理由は、勘みたいなものだけど、おからロールさんにはきっと彼女がいるからだ。

まぁ、あんなイケメンに彼女がいないと思うことのほうがおかしいけど、それだけじゃなくて、おからロールさんはいつも一つか二つしかパンを買わないのに、金曜日には決まって沢山買っていく。
しかも女子が好きそうなデザートパンばかり。

それがどういうことか、本当にただの勘だけど、多分週末に来る彼女のために買ってるんじゃないかと思うんだ。

丁度今日がその金曜日。


今の私には勉強やパン作りに情熱を注いでいる分、彼女がいるイケメンを好きになってがんばる程の気力はきっとないから。

袋を渡すときに目が合って少しドキッとする程度でじゅうぶんなんだ。

だけどひとつだけ……



おからロールさんの、名前……知りたいな。



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