片恋シンデレラ~愛のない結婚は蜜の味~

冬也side~

「冬也君は明日も仕事だろ?もう帰っていいよ」


「えっ!?で、でも・・・俺だって・・・年内には爺ちゃんから家元を引き継いで、今の間に顔見せしておいた方が」


俺は敦司様に反論した。


「新婚が妻を一人しておく気か?夏芽さんも寂しがっているだろうに。二人の時間は今の間しかないぞ。存分に楽しみなさい」


「・・・」

敦司様は俺達に子作りを楽しめと言ってるようにしか聞こえなかった。


副社長には言わないクセに、俺には言うんだな。


「分かりました」


「後は私に任せるといい。それよりも、夏芽さんが仕事を辞めないのはどうしてだ?」


「あ・・・それは・・・」
挙式日に爺ちゃんから言われた言葉を思い出した。

「お前が家元となれば、夏芽さんの内助の功が必要となる。家元の嫁の役目は仕事の片手間で出来るもんじゃない。だから、夏芽さんには仕事を退職して貰うように冬也お前が説得しなさい」と。

「家元の言葉を忘れたのか?」

「夏芽は仕事が大好きで、今の仕事を楽しんでやっています」

「家元の嫁の役目と仕事の両立は夏芽さんに大きな負担になると思うが」

「それは、分かっています」

「夏芽さんのコトを思っての家元の言葉だ。夏芽さんの実家のコトだってある。冬也君だってわかっているだろ?
私だって居るが、夏芽さんを守ってあげられるのは伴侶である冬也君だ。そうだろ?」
「はい・・・」
夏芽は俺の父親と母親が不倫関係にあったコトは知らないが、緑川家の人間は皆知っている。
俺達の結婚に反発する親族だって出て来た。
敦司さんの言葉はそれを知ってのコトだと思う。

俺は敦司様に全てお任せして帰宅した。


リビングに入ると液晶テレビの脇に置かれた真紅の薔薇の花束に目が釘付けになった。











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