片恋シンデレラ~愛のない結婚は蜜の味~
小陽さんは立ち止まってポロポロと涙を流した。


「こ、小陽さん!?」

ハンカチがあればいいんだけど、俺は首に掛けていたタオルで彼女の涙を拭く。


「すいません・・・緑川さん」


「小陽さんのキモチ分かりますよ。俺、副社長から全部訊いてますから」


「えっ!?」


「結構、副社長と話する機会が多々あって」


「そう。私と夏芽さんのように拓真さんは緑川さんと仲いいんですね」


小陽さんは気を取り直して涙を瞳に留めた。


「副社長も貴方と同じように苦しんでいますよ」


「私も拓真さんの苦しい胸の内は痛いほど分かっています。でも、私はどうしても子供は欲しいんです」

小陽さんの瞳に孕ませた決意の意思は固かった。

俺はそれ以上は何も言えず、話を畳んで別の話題に変えた。

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