片恋シンデレラ~愛のない結婚は蜜の味~
「伝統を守るって大変なコトだな・・・」


「大変な人をスキになってしまった・・・」

冬也とキモチを重ね、前向きに彼の進む道を一緒に歩む努力はしようとしたが。

周囲が許さなかった。


私と冬也が離婚しない限り、冬也の次期家元継承は叶わないかもしれない。


私はグラスのウィスキーの水割りを飲み干す。

「お姉ちゃん?そんなに飲んで大丈夫?」

「大丈夫。私はお酒に強いから・・・」

颯は心配そうに私を見る。


「冬也さんと結婚したコト、後悔してる?」


「後悔はしていない」


冬也は自らの運命に戸惑いながらも、560年の伝統を引き継ごうしている。


緑川家の人達はいい人ばかり。

でも、私にとって緑川家は格式が高すぎた。


「椿さん、常連の由真さんがお目見えです」
一人のボーイが颯の所に来て、囁く。


「お姉ちゃん、ゴメン・・・俺ちょっと行って来る。俺が居ない間、ヘルプのホストを付けといて」


「畏まりました」
颯はソファを立ち上がって、表情を引き締めて常連客が座るテーブルに向かった。

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