片恋シンデレラ~愛のない結婚は蜜の味~
フラワーアーティストを目指し、父さんの元に弟子入りした香苗だが、俺の次期家元継承が正式に決定したのを機に日本に帰国して母親の助手、俺のサポート役を買って出て、色々と世話をしていた。


「敦司様から訊いた週刊誌にこんな記事を売ったのはお前の母親の笹沼様だって」


「お母様は事実を話しただけよ。悪くないわ」


「香苗お前・・・」


「夏芽さん母娘が『氷見流緑川派』の伝統と格式に泥を塗ったのよ」


香苗は足を組み、紅茶を啜った。


俺は香苗の前のソファに腰を下ろした。


「何か飲む?」


「要らない」


「泥を塗ったのはお前達の方だ。
正月の生け始めは中止せざる負えない状況だ。今後の活動にも支障が出る」


夏芽の為に全てを捨てればいいと思うが、老体でこの状況に心を痛める爺ちゃんを見捨てるコトは出来ない。


< 287 / 359 >

この作品をシェア

pagetop