片恋シンデレラ~愛のない結婚は蜜の味~
**********

「私は何も訊いていないぞ。冬也」


日に日に弱る爺ちゃんの容体。でも、今日の声は凛とした響きだった。


「笹沼様がお見舞いに来られて、貴方と令嬢の香苗さんの結婚を和也さんにお話したらしいの」


婆ちゃんが俺に耳打ちしてくれた。


爺ちゃんには内緒の話だったから酷く動揺したらしい。


「夏芽さんと離婚したばかりなのに…もう再婚か?軽率だぞ。冬也」

「それは・・・『緑川派』を纏める為の苦渋の決断です。和也さん」


「纏める?」


「奈都也が家元を継ぐにしても、門下生の筆頭である笹沼様の力添えが必要です」


「冬也を人身御供にするつもりか?」


「和也さん・・・」


「マスコミを使い冬也の家元継承の邪魔をした・・・彼女の力添えは必要はない・・・」

「それでは分裂は避けられませんよ・・・」


「分裂しても良い。冬也を犠牲にして守った『緑川派』など、私は望んでいない・・・」


「二人の結婚は?」


「反対だ・・・」


爺ちゃんが俺と香苗の結婚を猛反対した。


< 318 / 359 >

この作品をシェア

pagetop