片恋シンデレラ~愛のない結婚は蜜の味~
夏芽はママチャリを押し、俺は歩調を合わせゆっくりと隣を歩く。


「いつもは徒歩で駅まで来てんだけど…今日はお母さんの自転車借りて来ちゃった」

「だから、ママチャリなのか・・・」
どうりで夏芽の自転車にしては後ろかごが付いてたり、前かごは盗難防止用のカバーが掛けられ、ハンドルには日焼け防止用のカバーと色々と実用的な装備が充実し、オバさん臭いと思った。あ・・・夏芽の母親の自転車だし、オバさんは失礼か・・・

俺は手土産に持っていた夏芽のお婆ちゃんが好んで食べる銀座に本店を構える老舗和菓子店『光文堂』の豆大福の入った紙袋を後ろかごに乗せた。


「お前の婆ちゃんの為に買った『光文堂』の豆大福だ。落とすなよ」

「わざわざ買ってきてくれたんだ。ありがとう」

「買って来たのは俺の婆ちゃんだ。今度会う時、忘れずに礼を言えよ」


「了解」


夏芽は寝起きなのか顔はすっぴんで服装はジャージ、足許は素足にクロックス。


「何だか無防備過ぎるな」

「えっ!?」

「お前の格好だよ」

「だって…慌てて来たから・・・」

「まぁ、いいけど・・・すっぴんになっても夏芽の肌は綺麗なんだな」

俺は意地悪くジロジロと夏芽のすっぴん顔を見た。30分も遅刻したんだこれ位は仕返しさせて欲しい。


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